STEP 1:サワードウスターターの育て方と活性化
1. イントロダクション:酵母との心地よい出会い
サワードウスターターって何?:
サワードウスターターとは
ドライイーストの代わりに、生地を発酵・膨らませるために使用する自家製の「発酵の元」です。(別名:発酵種やルヴァン種とも呼ばれます。)その材料は、小麦粉と水だけ。特別なものは一切必要ありません。
このシンプルな材料を混ぜて育てていく過程で、自然界に存在する野生酵母(パンを膨らませる)と乳酸菌(風味と酸味を与える)が瓶の中で合わさり、共生状態を作り出します。
この生きたスターターの力だけで、奥深く優しい香りのサワードウパンを焼き上げることができます。
サワードウでの重要性
このスターターが持つ力こそが、サワードウブレッドの魅力のすべてです。イースト(市販のドライイースト)にはない、優雅で奥深い酸味と、食べた時に感じる心地よい香りは、すべてこのスターターが作り出すものです。スターターが元気であればあるほど、あなたの焼くパンはより美味しく、風味豊かに育ってくれます。

この記事でわかること
このガイドでは、サワードウスターターをはじめてお迎えする方に向け、ヒーターなどを利用した日本のキッチン環境で失敗しにくい、確実性の高いお世話の方法を解説します。
- 用意するものはたった2つ:粉と水だけではじめます。
- 温度と湿度の整え方:一年を通じて、酵母が心地よく過ごせる環境づくりのコツ。
- 毎日のお世話(フィード):酵母が元気なサイン、そっと見守るタイミングを優しく見極める方法。
2. はじめる前の準備:お気に入りを選ぶ時間
サワードウスターター作りは、毎日のお世話の時間も大切にしたいから。使う道具や材料も、心地よいものを選んでみましょう。
🌿 必要な器材
| アイテム | おすすめポイント |
| 蓋つきのガラス瓶 | 酵母の活動や成長の様子を外から観察するために透明なガラス製を選びます。使用前に熱湯消毒を行い、完全に冷ましてから使いましょう。スターター100g(粉50g+水50g)に対しては、容量200mlから250ml程度の細身の瓶を選ぶと、少ない量でも膨張を見極めやすくなります。 |
| 精密なスケール | 0.1g単位で測れるものがおすすめです。粉とお水の繊細なバランスが、酵母の元気さを左右します。正確に測ることが、安定したスターターを育てるための重要なステップです。 |
| ゴムベラまたはスプーン | 混ぜ合わせるための道具です。シリコン製のゴムベラは、瓶の側面に付着した粉をきれいに集めやすく、また生地を混ぜる作業もしやすいという利点があります。 |
| 輪ゴムやマスキングテープ | スターターの成長(膨張)を正確に記録し、ピークを見極めるために欠かせません。フィード直後の高さを印付け、最大でどこまで伸びたかを確認するために使用します。 |
🌾 材料
| アイテム | おすすめポイント |
| 粉(ライ麦粉、全粒粉春よ恋) | はじめてスターターを作る際は、ライ麦全粒粉など、酵母の栄養源となるミネラルや酵素が豊富な粉を選びましょう。Day 2以降は、春よ恋などの強力粉を混ぜて使用します。 |
| 水(カルキを抜いたお水) | 酵母はデリケートなため、水道水を使う場合は、必ず一晩汲み置きしてカルキ(塩素)を抜くか、ミネラルウォーターを使用しましょう。水温は酵母が最も活発に働く25℃〜28℃の、少しぬるめの温度が理想です。 |

日本のキッチンでの温度確保のベストプラクティス
一年中、酵母が最も活発に活動できる25℃〜28℃の環境を保つことは、サワードウスターターを成功させるための最重要ポイントです。特に冬場は、以下のいずれかの方法で安定した温度を確保することが、失敗を防ぐ最善策となります。
- 発酵器(ブレッドプルーフボックス)の活用
- 最適な選択肢です。パン生地の発酵にも利用できるよう設計された専用機材は、設定した温度を非常に正確に、安定して保つことができます。初期費用はかかりますが、サワードウ作りにおける温度管理の悩みを根本から解決してくれます。
- ヨーグルトメーカーの活用スターターの立ち上げ段階(Day 1〜Day 7)で少量のスターターを管理するには最適です。25℃〜28℃に設定できる機種を選びましょう。ただし、完成後のパン生地の発酵にはサイズが合わないため、用途を分けて使用します。
- 簡易的なヒーター管理(パネルヒーターなど)専用の発酵器がない場合、設定温度(25℃〜28℃)を保持できるパネルヒーターやヒーターマットなどを活用し、スターターの瓶を直接温めることで、安定した温度を保ちます。この方法を用いる場合は、必ず温度計を設置し、温度が上がりすぎないよう注意深く管理してください。
サワードウスターター作りにおいて、25℃から28℃は、酵母(イースト)と乳酸菌(バクテリア)が最もバランス良く、活発に共存できる「スイートスポット」です。
20℃以下だと酵母の活動は非常に緩慢になります。完成に時間がかかるだけでなく、アルコール臭や腐敗臭の原因となる「余計なバクテリア」が優勢になりやすく、立ち上げに失敗するリスクが高まります。
25℃〜28℃だと酵母と乳酸菌が素早く、かつ良いバランスで増殖します。これにより、スターター特有の優雅な香りが早く安定します。多くのレシピがこの温度を推奨するのは、成功率が高く、失敗を防げるからです。
低い温度の場合: 発酵は進みますが、時間がかかります。(例:20℃なら24時間かかる作業が、18℃なら36時間かかる、など)。焦らず、時間を長く見てください。
高い温度の場合: 30℃を超えると、発酵が急激に進みすぎて、過度な酸味が出たり、スターターがすぐに使い切れないほどゆるくなりすぎる(オーバープルーフ)問題が発生します。
3. サワードウスターター育成レシピ
材料
必要な器材
Method
- 清潔なキャニスターに、50 g ライ麦粉 と62.5 g 水を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜ、温かい場所(25℃から28℃)に24時間置きます。
- 別の清潔なキャニスターに、24時間寝かせた37.5 g スターター、25 g ライ麦粉、25 g 強力粉、57.5 g 水を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜ、温かい場所に24時間置きます。
- 別の清潔なキャニスターに、24時間寝かせた37.5 g スターター、25 g ライ麦粉、25 g 強力粉、57.5 g 水を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜ、温かい場所に24時間置きます。
- スターターを2回に分けて与えます。24時間寝かせた37.5 g スターター、25 g ライ麦粉、25 g 強力粉、57.5 g 水を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜ、温かい場所に置きます。12時間後に、朝と同じように材料を捨てて与えます。そのまま一晩置いておきます。
- 4日目と同じ材料の割合で1日2回与えてください。同じ瓶をそのまま使用できます。
- 一晩寝かせた10 g スターター、15 g ライ麦粉、35 g 強力粉、50 g 水を加えます。これを1日2回、朝と夕方に1回ずつ繰り返し、無期限に与えてください。
栄養価
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温度
キッチンが涼しい場合は、混ぜる前に水を26°Cまで温めてください。瓶に軽く蓋をして、暖かい場所(26°C~29°C が理想)に直射日光を避けて24時間置いてください。サワードウスターターの捨て種
不要になった前日のスターターを「サワードウスターター・ディスカードと言います。捨てないで、大きめの瓶に継ぎ足して蓋をし、冷蔵庫で保管します。ディスカードを使用したレシピで利用します。栄養価
このページの栄養価は、サワードウ7日目の瓶の中の容量で計算しています。酵母のサイン:日別のお世話のポイント
ここでは、レシピカードの「作り方」に沿って、各日のスターターが示すサインと、観察のポイントを解説します。
- Day 1 のポイント
- 酵母たちが初めて出会い、活動を始めるための大切な時間です。翌日、小さな気泡が見え始めるかもしれません。焦らず、温度管理(25℃〜28℃)を続け、環境が酵母に優しく働くのを待ちましょう。
- Day 2 のポイント
- もし香りを嗅いでみて、少しツンとした酸味や刺激臭(アセトン臭)を感じても大丈夫です。これはまだ、酵母以外の不要なバクテリアが一時的に活動しているサインです。この日のフィードで酵母に良い環境を整えてあげれば、自然と落ち着いていきます。焦らず、静かに見守りましょう。
- Day 3 のポイント
- 25℃〜28℃の適温を保てていれば、Day 4にはより本格的な活動の合図が見えるはずです。変化を焦らず待ちましょう。この日のフィードから、ライ麦粉と強力粉のブレンドが始まり、スターターはさらに複雑で豊かな風味へと育ち始めます。
- Day 4 のポイント(1日2回フィード開始)
- 香りの変化: 刺激臭(アセトン臭)からヨーグルトのような、心地よい酸味へと香りが変われば大成功です。これは、乳酸菌が優勢になり始めた証拠です
- 失敗ではない変化: もし、まだ膨らみが小さくても、諦めないでください。温度が一時的に低くなっている、または酵母がまだ目覚めきっていない可能性があります。焦らず、1日2回のルーティンを繰り返すことが大切です。
- Day 5 のポイント
- 早すぎる膨張への対処: もし、フィード後 12時間以内にスターターが急激に沈んでしまう場合は、活動が活発すぎるサインです。次のフィードから温度を少し下げる(23℃〜25℃)か、粉の量を増やして比率を 1:4:4(スターター3g:粉12g:水12g)などへ変えることで、活動のスピードを調整してあげましょう。
- 活発化のサイン: Day 5 までに、フィード後の膨張が「いつものパターン」として定着していれば、完成は間近です。
- Day 6 から Day 7 のポイント(完成の見極め)
- 多くのスターターが成熟し始めますが、酵母の活動には個体差があります。もし7日を過ぎて変化が少なくても、心配は要りません。大切なのは、日数の経過ではなく、活動の規則性です。フィード後4〜8時間で2倍以上に膨らみ、規則正しく沈むパターンが確認できるまで、お世話を続けてください。

4. 元気に育った合図:完成の喜び
おめでとうございます!優しいお世話を経て、あなたのサワードウスターターはパンを焼ける立派な「元種」へと成長しました。次のチェックポイントで、完成を喜び合いましょう。
- 日数を気にせず続けましょう: 7日で完成しなくても、それは失敗ではありません。低温環境でじっくり時間をかけて育つ、個性的なスターターだと受け止め、諦めずに毎日同じお世話を続ければ、必ず力強く目覚めます。
- 成長の証: フィード後、4時間から8時間で印をつけた位置から2倍以上に膨らみ、再び沈むという活動を規則正しく繰り返している。
- 香りの決定: 刺激臭が完全に消え、優雅で心地よい酸味(甘いヨーグルトやフルーツのような香り)が感じられる。
- 完成のテスト: スプーンで少量のスターターをすくい、水に浮かべるテストを行ってみましょう。水に沈まず、ふんわりと浮けば、パン生地を膨らませる力が十分にある証拠です。
- 次のステップ: 完成したスターターは、ここからは「元種」としてパン作り(ルヴァンブレッドの作成)に使えます。すぐにパンを焼かない場合は、冷蔵庫に移して週に一度のお世話に切り替えましょう。
5. よくあるお悩み Q&A
スターターのお世話をしていると、不安になる瞬間がきっとあります。そんな時は、焦らずここをチェックしてください。
Q. 3日目以降、瓶の底に水っぽいものが溜まりました。
A. これは「フーゼラージュ(Hooch)」と呼ばれるアルコールの層です。酵母がお腹を空かせて、自分の持っている糖分を分解した結果です。この層ができたら、フィードのタイミングが少し遅れているサインです。この層はそのまま混ぜても、上澄みを捨てても問題ありません。すぐにフィードをして、暖かい場所に戻してあげましょう。
Q. ツンとした刺激臭がします。腐ってしまいましたか?
A. 初期の段階では、アセトン臭に近い刺激臭がすることがあります。これは、まだ乳酸菌が優勢になっていない一時的なサインです。数日間フィードを繰り返すことで、自然とヨーグルトのような心地よい酸味に変わっていきます。カビが生えていない限り、お世話を続けて大丈夫です。
スターターが全然膨らみません。失敗ですか?
A. 失敗ではありません。設定温度がズレて低くなっていないか、または新しい粉の栄養がまだ足りていない可能性があります。25℃〜28℃を保てていれば、必ず目覚めますので、Day 7以降も同じお世話を継続しましょう。

